渭南エココミュニティー

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風力発電のデメリット

 化石燃料に依存しない風力発電は、地球温暖化をエネルギー政策において抑制しようとする際、現時点では最もその導入効果が望めるもののうちのひとつである。しかしながら、風力発電が一方では当該地方の環境に重大な影響を及ぼすものであってはならない。
NEDOが発行した『風力発電のための環境影響評価マニュアル』序文の書き出しである。
前段の、……最もその導入効果が望めるもののうちのひとつである。は全体的な視点からメリットを主張していると理解されるが、その裏にあるデメリットは無視できるものなのだろうか。そして後段の、……当該地方の環境に重大な影響……について、推進している人々は本当に地域のことを気にかけているのだろうか。
 風力発電はクリーンなエネルギーとして注目され、2010年までの導入目標を300万kWと国が設定したこともあって、その短所には言及せずメリットばかりが強調されている感がある。一方、デメリットとして「バードストライク」「景観」等を主張する人たちがいるもののごく少数に過ぎず、これに基づく反対意見は『地球温暖化防止』という錦の御旗のもと葬り去られているのが現状ではないだろうか。
 自然保護団体などが主張する「バードストライク」「忌避行動」「希少種の保護」、個人によって大きく価値観の違う「景観」等々は世間の多くに受け入れられ、風力発電再考を促すエネルギーになりうるのだろうか。いや、快適な生活とお金を重視する今時の文化にはね返されていると認めざるを得ないだろう。
 他に世間一般が納得するデメリットは存在しないのだろうか。なにかをする時、他にまったく影響を及ぼさないことなど考えられないではないか。それがたとえ小さな影響であったとして、そのことを承知したうえで行動に移すべきだと考える。ここでは良い面ばかり宣伝されている風力発電の、そうとばかりは言い切れない面を、思いつくままに探し出してみたい。そして、それぞれをその道の専門家に評価していただきたいと思う次第である。


義澗療な視点
1 二酸化炭素
1) 二酸化炭素排出
 風力発電では二酸化炭素排出がないと宣伝されているが、それは運転中のことであろう。資源の採取から加工、組立て、運搬、建設、管理さらには、耐用年数を経てあるいは災害を受けての解体、廃棄にいたるライフサイクルにおける二酸化炭素排出を無視した上に成り立っている話である。廃棄処分経費を計算にいれずに発電コストが安いと推進し、今になって問題となっている原子力発電の先例もある。風力発電設備の生涯における二酸化炭素排出量を明らかにすべきであろう。専門家ならできないはずはないだろうし、もうすでに算出しているのだが都合が悪くて公表していないだけかもしれない。排出量が無視できるほど小さければよいが、そうでないなら一種のごまかしではないのか。

2) 二酸化炭素吸収
 樹木の重さの約半分は炭素といわれ、森林の地球温暖化防止能力が注目されている。森林1haが吸収する炭素量は、50年生のスギ林で170t、50年生のブナ林で90tといわれている。
政府は、京都議定書で義務付けられた削減量6%のうち半分以上の3.9%を森林の炭素吸収によって達成しようと、平成13年「森林・林業基本計画」を樹立した。だが、1990年以降CO2排出量は8%も増えており、削減目標量は実に14%にも達する。そうなれば、COPが認めるか認めないかは別としても、森林の吸収能力にはさらなる期待が掛けられることになるだろう。
国内森林の二酸化炭素吸収能力を年間1兆2391億円と貨幣評価した三菱総合研究所の試算もある。そんな大切な森林を伐採して風力発電施設を設置する事例が各地で見受けられる。風車を設置するために必要な個々の面積は大きくはないだろう。しかし開発する面積はそれだけではすまない。風車建設のために大型のトレーラーが走行する道路は、そのまま管理道として残される。風況の良い稜線に設置される風力発電建設では、一事業あたり少なくともha規模で森林が開発される。この開発される森林の温室効果ガス抑止能力減少についても、評価は置き去りにされたままである。
 前項で森林開発による影響に触れたので、つづいて森林の多面的機能を取り上げてみたい。

2 森林の多面的機能
1) 土砂災害、土壌保全
 落葉や枯れ草、朽木は多くの生物によって徐々に分解され腐葉土となり、植物が吸収可能な無機質にもどされる。再生された土壌はその場所で植物を育て、関係する動物たちをも育てる。一方、流れ出した無機質は川の生命を育み、里を潤し、海に至って、母なる海を母たらしめる。そのように大切な土壌を護る表面侵食防止機能を、同じく三菱総研は28兆2565億円/年、さらに表層崩壊防止機能を8兆4421億円/年と評価している。風力発電一箇所あたりの開発面積を小さいと考えても、これが全国的に行われた時の損失は膨大なものだろう。なんでもお金に換えて考えたい現代の人々にご理解いただけるように、貨幣評価の例を引用した。が、まだその上に土壌を作る能力も大きいし、雪崩防止、防風、防雪効果も評価すべきだろう。
2) 洪水緩和、水資源貯留、水質浄化
 森林を緑のダムと考える見方は、今どき常識だろう。降った雨が流れ出す割合のことを流出係数と言い、樹種や地質によって左右されるが、森林の流出係数はおよそ0.5-0.6とされている。つまり五割から四割は森林が水を保持するというわけである。
 2004年に我国を襲った多くの台風では、一時間に100mmを越える強い雨が複数記録された。愛媛県一本松町では昭和57年に115mm/hrの猛烈な雨を記録している。地球温暖化が進むなか、100mm/hrの降雨強度は覚悟しておかねばならないだろう。そうすると、例えば1haの面積に降る雨量は一時間1000tに達することになる。この1haが植物のない裸地だとすると、その流出係数は0.9-1になり、森林に比べて流出係数は0.4程度大きくなり、流れ出る水は400t増加することになる。この400tをどう評価するかも大事なことである。単純に一秒間の洪水量に割り算すると0.11t/secとなり、非常に小さい数字だと捉えることもできる。しかし、今現在容量ぎりぎりの渓流だった場合などは0.11t/secの流量増加は影響が大きいかもしれない。さらに、そこに土砂崩れなどの転石か流木でも引っかかったら、たまったものではない。
 前例と同じように三菱総研の貨幣評価を紹介するならば、森林の洪水緩和機能を治山ダム代替財として6兆4686億円/年、水資源貯留機能を利水ダム代替財として8兆7407億円/年、水質浄化機能を雨水利用施設及び水道施設代替財として14兆6361億円/年と、水源涵養機能全体で実に毎年29兆8454億円もの評価になっている。
 森林は上記のように余計な水を蓄える機能のほか、逆に大気中の水分が少なくなると地中の水分を吸い上げて蒸散させる機能もあわせ持っている。この作用が霧を発生させ、雲をつくり、雨を呼ぶ。気候の安定を保ち、地球の物質循環を担う、底知れない力を秘めているのである。
3) 生態系保全、生物種保全、遺伝子保全
 さまざまな生命が住む森林の生物多様性保全機能は多くの人々がご承知であろうし、その説明をする場でもない。
 森林開発は植生が取り払われるだけでなく、その植物に依存する他種の棲み処も奪ってしまう。直接除かれなくても、直射日光があたりはじめることや、土やアスファルトの照り返しで気温が上がることによって、そこに住めなくなる生き物がでてくる。
 また、例えば小さな小鳥が生涯に捕食する虫の数は10万匹に達するという統計もあるらしいが、鳥たちのそんな働きも消滅してしまう。こう言うと、森が無くなれば虫たちも居なくなると反論されそうだが、虫たちは食糧を求めて今以上に人に近づいてくるだろう。一方の鳥は人家近くにまで虫を求めてやってくるだろうか。例え餌があっても、絶えず必要な水浴びや休息の場所、そして一番大切な営巣場所がなく、なにより一番危険視している人間に近寄るはずがない。そうすると虫は増えるが、それを捕食する鳥は減少する。自然の循環を損ねるということになる。レイチェル・カーソンの「農薬を散布するから害虫が増える」との訴えを思い起こしたい。
 さらに虫を捕食するクモやカエル。減農薬や無農薬栽培がひろまってクモやカエルの有難さが再評価されるようになってきている。殺虫剤の代わりを務めてくれるからである。同じことが森林に住むクモやカエルにも当てはまる。この損失はどのように評価されるのだろうか。
 我々は、珍しく希少な生物だけに注目しがちだが、それで事足りるのだろうか。今の人類が知っている以上に、生物たちは複雑で精妙な循環を形成しているかもしれない。そこまで既成概念を越える評価は期待できなくとも、現時点での評価がされるべきだと考える。種と遺伝子の保全も含めて、専門家の先生の考えをお聞きしたい。
4) 快適環境形成
 森の緑は目も心もあらってくれるし、木々が発散する匂いもまた心を癒す。暑い夏には涼しさをもたらし、寒い冬は風をさえぎって暖かさをくれる。2)でふれた気候の安定を含めて、大気の浄化作用や騒音防止、アメニティー形成など快適環境機能は評価されないのだろうか。風力発電によって減らされるこれらについても、評価の対象にすべきであろう。
5) 物質生産
 森林の木材生産機能は今でこそ評価が低くなっているが、地球温暖化をさらにおし進めるといわれる熱帯雨林の伐採を少なくする意味でも、国産材は注目され、利用されなくてはならないだろう。そういう見地で木材の価値は評価に値すると考えるが、大方の意見はどうだろう。
 さらに、山菜やキノコなど食料、様々な工業・工芸材料を生み出す森林の価値はゼロなのだろうか。
6) 保健・レクレーション・文化
 近来、森林の療養効果が評価されている。さらに散策や森林浴、行楽・スポーツの場としても価値ある存在である。また、自然を認識したり、体験やふれあいの場としての教育・学習機能、宗教・祭礼・伝統文化の拠点である場合も多いことだろう。

3 素材
 今、遺伝子を改造する遺伝子治療が進みつつある。倫理面などで問題があるとされる生殖系列細胞遺伝子改造や増進的遺伝子改造には一定のブレーキがかかっているものの、体細胞遺伝子改造は、癌が生じないように細胞を改造するなどゲノムビジネスとして脚光を浴びている。
 一方で昭和55年からの20年間で国内での癌による死亡数が二倍近くに増加している事実。なかでも環境ホルモンの影響が大きいとされる前立腺がんによる死亡数は五倍近くになり、さらに15歳以下の少年の死亡原因の上位に悪性新生物、先天奇形、染色体異常が挙げられている現実。そこには合成化学物質が大きく関与しているとは考えられないのか。第5回までは環境省が報告書を出した「内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」をはじめ世界中の研究機関からは様々な合成化学物質による生物影響が報告されている。これに関してEUはゲノムビジネスを、遺伝子治療をビジネスチャンスと見做し、有害物質を作り続けることで経済には貢献するが、有害物質を拡散させる、人類に不利益な活動と位置づけているようだ。
 風力発電設備に使用される素材には、そんな物質は使われていないだろうか。危険な兆候があるものの、危険性が立証されていないために、或いは危険性の確認が遅らされて使い続けられる物質が含まれていないだろうか。そのような不利益も是非評価してもらいたい。

4 景観
 景観の評価は人によって大きく異なるだろう。私などは自然のなかに人工のものがあると違和感をもってしまうが、風車を見学して美しいと感じる人もあるらしい。どうやら教育に起因していると思われる。ある心理学教授の話しに「子どもは感性が鋭いというのは間違っている。子どもは育っていくうちに感性を磨いていくのだ」というのがあった。この言葉をうらづける経験をしている。小学生の自然体験で、センブリの花を「きれいだろう」と示したところ、「きれいでない」と返ってきた。「なら、何がきれいなの?」と聞くと、「ヒマワリ」と言う。なるほど幼児の絵は、たいていがヒマワリかチュウリップである。
 アケボノソウのあの小さな花びらの中に、明けの明星が残る夜明けの色を見出した先人の感性。そんなことを完全に置き去りにした、進歩発展を善とする学校教育が感性さえも狂わせたと考えている。私が小学生の頃「人工の美」という言葉を習った。とにかく新しいものを作り出すこと、便利・快適になること、そういうことができる人間を輩出することが学校教育に求められ、世間もそう信じてきた。そんな世の中は今も延々と続いている。物事を粗末にしない、些細なことにも注意が向けられる、そんな感性が失われた時代に景観論争は成立しえないだろう。

5 動物影響
1) バードストライク
 バードストライクに関して一点、野鳥の会も触れていないのではないかと思われる点を提案したい。事業者もコンサルもバードストライクの被害は無い、或いは少ないと答える。心配ならブレードを希望の色にすると言う。特に発電事業者は、自分のところでは被害は確認されていないと言う。ここで声を大にして言いたいのが自然の循環である。野生たちは生きているときから捕食者に狙われている。自分より大きく強い相手でも、弱ってくれば餌にしようとする。死が確定する前から捕食者による分解がはじまる。すなわち短時間で分解されてしまい、めったに自然のなかに足を踏み入れることのない人間の目に留まることのほうが少ないのだ。が、推進派の、被害は少ないとする主張に対して、被害のデータを集めて示すしか対抗手段はないのだろうか。この点も識者のご指導を仰ぎたい。

2) 忌避行動
 巨大な羽根がビュンビュンと音を立てて回転すれば、それを嫌うのは鳥にかぎらず地上の生き物たちも同じだろう。動物の中には、やがて学習し、慣れてしまうものもあるかもしれないが、基本的に行動範囲から外すと考えるのが常識的だろう。付近から動物がきえれば、関連する植物にも影響が現れるのは避けられないことである。
 つづいて、風力発電施設が建設される個々の地域での影響を考えてみたい。


供|楼茲了訶
 立地する個々の地域においても、前記の森林開発における影響は受けることになるのだが、地方だからこその不利益がありそうである。

1 防災事業
 -2-2)でふれた洪水に関して、今現在河川の通水能力にゆとりがない場合、少しの流量増加でも河川改修工事が必要になる場合が想定される。この工事費を誰が負担するのか。原因者が明確にできない限り地元市町村が負担せざるを得ないだろう。開発によるものだと確認できないかぎり事業者には請求できず、個々の開発面積が小さい風力発電の場合、立証は困難であろう。そうすると市町村は、事業者からはいる固定資産税の最低でも数十倍以上の支出を覚悟しなければならないことになる。
 治水事業を述べたが、土砂災害やがけ崩れを防ぐための防災事業も必要になるのではないか。

2 利水事業
 山間部では渓流から直接飲み水を引いたり、簡便な簡易水道施設で生活用水をまかなっていることが多い。上流部が開発されることで水が枯渇したり、水道(みずみち)がかわって利用できなくなるケースも考えられる。さらに農業用水に影響がでることも考えられる。そうなった時、地域の昔の姿をしらない事業者が、原因者は自分だとあっさり認めて復旧したり、補償する可能性は極めて低いと考えるがどうだろう。公共の施設なら市町村の、個人の施設なら個人の負担になることを認識しておく必要がありそうだ。

3 土地の帰属
 土地の所有形態をどうするのかも、重要なことである。現在、風力発電事業には国の補助金が1/3あって、さらに他団体から低利の融資をうけることも可能だ。自己資本の低さが、風力発電事業に参入しやすい追い風となっているが、この助成制度が将来にわたって継続される保証はあるのか。一般的に15年とされる耐用年数を迎えたとき、さらに設備を更新して発電事業を継続するためには、変動するかもしれない助成制度が、その時点の事業者の間尺に合わなければならない。法律で定められている電力会社の電力購入価格《2005/7/14愛媛新聞は、四国電力が購入価格見直しを行った結果、従来の価格を下回る可能性がでたため四国中央市での風力発電計画が実現しない可能性を報道した》も同様に継続か、廃止かの判断材料になり、いつまでも土地が風力発電に使用される保証はないことになる。また、風あっての風力発電だが、風速70m/secで設計された風車の破損事故は全国的に少なくなく、洋上に設置した施設は数年で事業者が見切りをつけて放置した例もあるらしい。雷が好むことも大きなデメリットだろう。落雷による損傷・運休も数多い(写真)。
災害による被害はいつも保険で補償され、運転は継続できるのだろうか。

 土地を売り渡していたら、もし風力発電事業が中止された時、その先どう使われても関与することはできない。
産廃の不法投棄などであれば法律に基づいて対応できるかもしれないが、地元の人間にとって不利益なことに使われる可能性は十分に考えられる。

4 騒音
 騒音は、それこそ立地地域の問題だろう。事業者は騒音環境基準に基づいて計画するので地域がどう判断するかということになってしまう。普通に風力発電所を見学した時、気になる程のことではないが、夜間など近傍では影響が考えられる。

 環境基準があって、対応が容易だからマニュアルに登載されているのだろうか。

5 電波障害
 電波障害は風車と送電線に起因するのだろうが、こちらもその付近に限定して起こる影響だ。そして、風車の下で携帯電話をつかってみたが影響はなかった。電波障害も対応がし易いから評価項目に取り上げられていると、皮肉にみてしまう。

 以上、風力発電に関して考えつくままにその不利益を記したが、本来なら風力発電によって地球温暖化防止を願う対症療法を行うより、電力の消費を最小にする根本療法を選択すべきである。本稿ではそれには触れないが、対症療法を選ぶ場合でも太陽光発電のほうが、開発を伴わないだけ環境への負荷は小さいと提案しておきたい。政府の目標も風力発電300万kW、太陽光発電480万kWと太陽光発電のほうが大きいのである。

参考文献 地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の機能の評価について(答申):日本学術会議

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